Bistable Latch Circuit
【MAL-Seeker 回路方程式テスト】交差結合インバータのDC動作点
2-Variable Cubic Circuit Model
Physical Operating Points: 3 / All Real Roots: 5 / All Complex Roots: 9
1. 「0」と「1」を記憶する最小モデル
双安定ラッチは、2個のインバータの出力を互いの入力へ戻すことで、2つの状態を保持する回路です。表示用SPICEネットリストでは、各段を負荷抵抗とNMOSトランジスタで構成し、左側の出力 $q$ を右側のゲートへ、右側の出力 $\overline{q}$ を左側のゲートへ交差結合しています。
回路としては単純でも、2本の帰還ループが同時に整合する点を探す問題になります。論理状態に対応する非対称な2点だけでなく、中央の対称点も含めて捕捉できるかが最初の確認項目です。
Resistor-loaded NMOS bistable latch
VDD vdd 0 1.0
RL1 vdd q 10k
RL2 vdd qb 10k
M1 q qb 0 0 NMOS_LATCH L=1u W=20u
M2 qb q 0 0 NMOS_LATCH L=1u W=20u
.model NMOS_LATCH NMOS (LEVEL=1 VTO=0.35 KP=100u LAMBDA=0.02)
.nodeset V(q)=0.95 V(qb)=0.05
.op
.end
2. 全解探索に用いた簡易モデル
上のネットリストは、負荷抵抗とNMOSトランジスタによるラッチ構成を示すSPICE3f5用モデルです。素子値は説明用であり、3次モデルへフィッティングした値ではありません。MAL-Seekerが実際に全解探索したのは、SPICEのB電流源で各インバータ特性を次の3次式へ簡略化したモデルです。
SPICE3f5用の簡易モデルでは、各ノードからGNDへの正規化抵抗 $R=1$ が $v_1$ と $v_2$ の項を受け持ち、B電流源が相手側ノードによる $-f(v)$ の項を受け持ちます。DCのKCLを展開すると次の連立多項式になります。
各式は3次なので、複素射影空間で重複度を含めない今回の孤立解探索では、総次数の上限は $3\times3=9$ です。物理電圧範囲、広い実数範囲、複素数領域の3段階に分けて調べました。
3. 物理範囲で見つかった3つの動作点
| Operating Point | v1 | v2 | Interpretation |
|---|---|---|---|
| A | 0.9472135955 | 0.0527864045 | High / Low state |
| B | 0.5000000000 | 0.5000000000 | Central symmetric point |
| C | 0.0527864045 | 0.9472135955 | Low / High state |
非対称な2点はラッチの相補的な論理状態に対応し、中央には対称な動作点が現れました。ただし、このページで解いているのは静的な平衡方程式です。各点の動的安定性を厳密に確定するには、容量や時間発展を含む別のモデルが必要です。
4. 実数5解から複素数を含む全9解へ
| Run | Search Domain | Expected Roots | Solutions Found | Run Time (sec) |
|---|---|---|---|---|
| Physical search | Real, 0 ≤ v1, v2 ≤ 1 | 3 | 3 | 0.002338 |
| All-real search | Extended real range | 5 | 5 | 0.006594 |
| Total-degree homotopy | Complex domain | 9 | 9 | 0.000677 |
実数範囲を広げると $(-0.5954451150,-0.5954451150)$ と $(1.5954451150,1.5954451150)$ が加わり、実数解は5個になります。さらに総次数ホモトピーで9本の経路を追跡すると、9本すべてが成功し、残る4個の複素解も捕捉しました。
5. 解析環境
- Analysis EngineMAL-Seeker (Project Antares Ver 3.1.6)
- Development ProjectProject Bellatrix V1.0.4
- ComputerMacBook Pro (Mac17,2)
- OSmacOS Tahoe 26.4 (Build 25E246)
- CPUApple M5, 10-core (4P + 6E), arm64
- Memory32 GB
わずか2変数の回路でも、「使いたい動作点」「実数として存在する解」「代数系が持つ全解」は同じではありません。物理範囲の3点から始め、実数5点、複素数を含む9点まで段階的に地図を広げることで、回路設計と全解探索の距離がとても見通しよくなりました。