PHCpack Benchmark Test
【MAL-Seeker 実験記録】PHCpackテストスイート適用実験(中間報告)
Target Benchmark Suite:
Variables: Various (High-dimensional polynomial systems)
Mathematical Property: Extreme non-linearity, high-degree terms.
1. 目的と実験概要
自作非線形方程式全解探索エンジン「MAL-Seeker (Project Bellatrix)」の極限環境下における堅牢性を検証するために、代数幾何学分野において極悪ベンチマークとして名高い「PHCpack」のテストスイートを選定しました。
代数幾何学に特化した特殊なホモトピー法等に頼ることなく、「広域初期解選定(5SS)」と「遅延デフレーション」を組み合わせた純粋なニュートン法のみで、これらの難問をどこまで攻略できるかを観測しています。
2. 実行結果(25問題の探索ログ)
これまでに着手した25問題の解析結果を示します。大半の問題において全解の捕捉に成功していますが、一部の系では探索エージェント数の増強や、微小な距離(dist)およびヤコビ行列の行列式(det_J)の判定閾値に対するシビアなチューニングを要しました。
一方で、今回の実験では「i1」のように、パラメータの調整を重ねても全解を捕捉しきれず、途中で探索が未完に終わってしまった問題も実際に存在します。高次多項式が織りなす数理的な障壁は、現在のMAL-Seekerの能力を以てしても一筋縄ではいかず、ソルバーを迷わせる極めてやっかいな地形を作り出しています。
| Problem | Bounds | Sol | Time (sec) | Notes / Parameters |
|---|---|---|---|---|
| boon | ±5.0 | 8 | 3.338 | |
| comb3000s | ±20.0 | 16 | 4.022 | |
| eco6 | ±50.0 | 16 | 4.508 | |
| gaukwa4 | ±5.0 | 24 | 14.963 | |
| mickey | ±5.0 | 4 | 0.660 | |
| rbpl24s | ±20.0 | 40 | 16.831 | |
| s9_1 | ±10.0 | 10 | 1.599 | |
| conform1 | ±5.0 | 16 | 1.903 | |
| eco7 | ±50.0 | 32 | 2.959 | 変数変換あり |
| geneig | ±5.0 | 10 | 7.714 | |
| noon3 | ±5.0 | 21 | 1.339 | |
| redcyc5 | ±5.0 | 14 | 1.473 | |
| sendra | ±100.0 | 46 | 27.347 | |
| butcher | ±5.0 | 5 | 8.003 | |
| cpdm5 | ±10.0 | 157 | 33.425 | dist閾値: 3e-3 → 2.8e-4 |
| eco8 | ±10.0 | 64 | 11.329 | Agent: 200,000 |
| heart | ±20.0 | 4 | 25.864 | |
| noon4 | ±10.0 | 73 | 5.051 | |
| redcyc6 | ±5.0 | 26 | 3.489 | 次元拡張なし, Agent: 100,000, det_J: 1e-7 |
| solotarev | ±10.0 | 6 | 15.840 | Agent: 700,000, det_J: 1e-25 |
| butcher8 | ±5.0 | 5 | 7.740 | Agent: 100,000 |
| cyclic5 | ±5.0 | 70 | 3.814 | |
| extcyc5 | ±5.0 | 70 | 3.713 | |
| i1 | ±50.0 | 50 (未完) | 19.379 | dist閾値: 2.8e-4 → 1.0e-6 |
| noon5 | ±5.0 | 233 | 6.653 | dist閾値: 1.0e-6 → 2.8e-4 |
3. 今後の展望(未検証問題と限界点への挑戦)
前項の通り、現時点で25問題への適用テストを行いましたが、PHCpackのテストスイートは非常に膨大であり、未だ試していない問題が多数残されています。
また、実際にMAL-Seekerを適用しても完全には解ききれなかった問題があるという事実は、このエンジンがまだ決して完璧な存在ではないことを明確に示しています。しかし、この強大な障壁や限界点に直面し、その存在をデータとして正確に観測できたことは、開発において非常に重要なマイルストーンとなります。
MAL-Seekerは完璧なソルバーではありません。だからこそ、未だ手を付けていない未検証の難問群に対するテストを今後も地道に継続していく必要があります。高次多項式に起因するヤコビ行列の発散を抑え込むための動的スケーリング戦略などの改良を進め、エンジンのさらなる堅牢性を求めて全探索を再開いたします。
4. 解析環境およびエンジン仕様
- 解析エンジン: MAL-Seeker (Project Bellatrix 1.0.3/ 純粋ニュートン法+5SS)
- PC: MacBook Pro
- OS: macOS Tahoe 26.4
- CPU: Apple M5
- メモリ: 32GB