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Practical Geometry

なくしたBluetoothイヤホンはどうやって探す??

1. 部屋のどこかにある、でも見つからない

Bluetoothイヤホンを片方だけ部屋の中でなくしてしまう。スマホと接続は繋がっている(音楽は鳴る)のに、場所が特定できない。そんな経験はないでしょうか?

布団の下なのか、棚の裏なのか。闇雲に歩き回ったり、音を頼りに探すのは効率的ではありません。ここで役立つのが、中学校で習った「数学(幾何学)」の知識です。

2. 数学的ツール:三角形の外心

まず、問題を解決するための数学的な道具を用意しましょう。幾何学には次のような重要な定理があります。

「平面上の同一直線上にない3点を通る円は、ただ1つ存在する」

この円を外接円、その中心を外心 (Circumcenter) と呼びます。外心は、3点からの距離が等しい点であり、各辺の垂直二等分線の交点として求めることができます。

図1: 外心(赤点)は、各辺の垂直二等分線(緑線)の交点となります

3. 物理現象への応用:Bluetoothの波

では、これをどうやってイヤホン探しに応用するのでしょうか?

Bluetoothの電波は、障害物がなければ同心円状に広がります。電波強度は距離に応じて減衰しますが、具体的な数値(dBm)を読み取るのは困難です。しかし、誰でもはっきりと分かる境界線があります。

それは「接続が切れる/繋がる ギリギリのライン」です。

この「接続限界」は、イヤホンを中心としたある半径 $R$ の円周になります。つまり、部屋の中で「接続が切れる場所」を3箇所見つければ、その3点は同一円周上にあり、その中心にイヤホンがあることになります。

4. 実践:外心探索アルゴリズム

音楽を流しながら、以下の手順を実行します。

  1. 点Aを見つける:
    部屋の中心から歩き出し、音がプツッと途切れた場所に目印を置きます。
  2. 点Bを見つける:
    一度接続エリアに戻り、別の方向へ歩いて、同様に音が途切れた場所(点B)を見つけます。
  3. 点Cを見つける:
    さらに別の方向へ歩き、3つ目の切断ポイント(点C)を見つけます。
  4. 交点を目指す:
    頭の中で、線分ABと線分BCの垂直二等分線をイメージしてください。その交点へ向かえば、そこがイヤホンの位置です。
接続エリア (Connected) 圏外 (Disconnected) 点 A 点 B 点 C Target

図2: 切断ポイント3点(点線の三角形)からの位置特定

5. Dr.WataWata's Insight

工学において「最大値(ピーク)」を探すのは、ノイズの影響を受けやすく難しい処理です。一方で、「オンかオフか」が切り替わる「エッジ(境界)」を検出することは、はるかに容易で確実です。

「中心が分からなければ、まず外堀(境界)を埋めよ」。これは、画像処理のエッジ検出やロボットの探索アルゴリズムにも通じる、数学的かつ戦略的に理にかなったアプローチなのです。